STORIES

あの時の、あの着物のキオク。

箪笥を開けると、母を思い出す。たとう紙をひらくと、あの頃の時間が、静かによみがえる。

01

箪笥を開けると、母を思い出す。

結婚するとき、母が持たせてくれた着物。久しぶりに箪笥を開けて、その着物を見つける。触っているうちに、買ってもらった日のことが蘇ってくる。

おしゃれは、記憶に残る。きちんと装う母の姿を、私はずっと見ていた。

02

おしゃれは、記憶に残る。

着物だけではなく、洋服も着る。ちょっといい場所へ出かける日は、いつもより少し時間をかけて支度をする。家族の写真を見ると、その人らしい色や柄の好みがずっと残っている。

捨てられないものには、理由がある。もう着ない。それでも、この一枚だけは手放せない。

03

捨てられないものには、理由がある。

断捨離をして、食器や家具、洋服はかなり整理した。でも、着物だけは残った。なぜだろう。理由は一つではない。